異国の風が抜ける、「憩い」のランドスケープ
境界線の向こう側で描く、異国のカフェテラス
そこは、日本でありながら日本ではない場所。米軍岩国基地のフードコートに新設されたテラス、それが今回の舞台でした。オーダーは、食事を楽しむための屋外空間の演出。しかし、私たちが目指したのは単なる「植栽」ではなく、訪れる人々が瞬時に日常を忘れ、どこか遠くの国へ旅したような気分になれる「海外のカフェ」の風景でした。
制約というキャンバスに描く、優しさと機能美
基地内という特殊な環境下では、デザインの自由さと厳格なルールが交錯します。 「子供たちが駆け回り、触れても安全であること」。それが絶対条件でした。私たちは、棘のある植物を排除し、代わりにローズマリーやウエストリンギアといったハーブ類を選びました。これらは柔らかな手触りだけでなく、風に揺れるたびに爽やかな香りを漂わせ、自然の力で虫を遠ざける機能も果たします。
視線の高さには青々とした葉を茂らせるコニファーを配置しました。成長すれば大人の背丈を超え、緩やかな目隠しとなりながら、ウエストリンギアやラベンダーのシルバーグリーンの葉、コニファーやローズマリーの柔らかな濃緑がコントラストを生み、異国情緒を決定づける演出となります。足元には白い石を敷き詰めました。それは美観のためだけでなく、水やりの際の泥はねを防ぎ、清潔な空間を保つための、私たちなりの「配慮(こだわり)」です。
言葉の壁、文化の壁、そして「Perfect」の響き
数ヶ月に及ぶ準備期間、セキュリティの壁、そして文化の違い。私たちにとって戸惑いの連続でした。
しかし、すべての作業を終え、植栽が完了したその時、担当者から「Perfect(完璧だ)」という言葉に、国境や言葉を超えた「心地よい」ランドスケープがそこに誕生したことに安堵しました。
施工者の想い
私たちは、単に木を植えるのではなく、その場所で過ごす人の「時間」や[空間]を描きデザインすることを心がけています。日本とは違う制約の中で、コスト面も工夫ながらも最良の景色を作る。米軍基地に住む人々の日常に「憩い」の空間を作る。フードコートテラスで食事を楽しんで人々の笑顔を想い浮かべながら。




Store/米軍岩国基地 フードコートテラス Director/Planner:yanai